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欠損しているものを補う治療

土曜日, 2月 13th, 2016

遺伝子治療は、遺伝子が正常でないことによって何らかの疾患が生じてしまっている際に、遺伝子を操作することによってその治療を目指すアプローチです。そのコンセプトだけを考えれば、多様な先天的な遺伝性疾患に対して有効といえます。それとともに、後天的に遺伝子が壊れてしまって生じるがんのような病気にも、有効性が期待できます。しかし、考えたように自在に遺伝子を操作するということは、技術的に難しいようです。そのようなことから、あらゆるタイプの治療が実現できるようになっているわけではありません。実施例があるものも、試行錯誤の中で行われたものであるというのが一般的です。その試行錯誤ともいえる状態ではじめて実施されたとされているのが、アデノシンデアミナーゼ欠損症の治療であり、時代は1990年に遡ります。アデノシンデアミナーゼの欠損は免疫不全を引き起こすことから、幼くして命を落とすことになりやすい疾患の一つです。この治療においては患者本人由来のリンパ球を取り出し、それに対して正常なアデノシンデアミナーゼの遺伝子の導入を行い、それを患者の体内に戻すという方法が行われました。これによって、体内ではアデノシンデアミナーゼを作ることができるようになり、免疫機能を取り戻すことに成功したのです。こういった形での治療は遺伝子が欠損してしまっていることによって作れなくなってしまっているものを、身体の中で作れるようにするということが基本的な考え方であり、唯一方法論が確立されている治療法となっています。